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2019.1.3

実家の庭に広めの花壇があり、

面倒くさがりの親父が唯一欠かさずしていたことが花に水をやることだった。

よく理由をつけては手伝わされたことを覚えている。

その花壇から正反対の場所に自分の背丈くらいの木がある。

ちょうど居間から見渡せる位置にあって、冬の時期になると白い花が咲いた。

他の植物達が眠る時期に、ひっそりと咲くその姿は子供ながらにも綺麗だと思えた。

この前の帰省で久しぶりに庭を歩いてみた。

当時に比べたらほとんどが枯れていたが、その木はまだひっそりと佇んでいた。

この木の事よく知らないなと思い母親に聞いてみたら、

どうやらこれは「梅の木」らしい。

 

それにしても、どうして花壇ではなく縁側付近に植えたのだろうか。

そう思いながらぼんやりと「梅の木」について調べていたら、

その木は俺の誕生花だという事を知った。

俺のための花だった。

ああ親父らしいな。

大切な事はいつも言ってくれない。

実家を出発する数分前に、

荷物を詰め終えたバックパックから急いでカメラを取り出し、

その木が落とした影の壁前に親父を座らせた。

 

親父も俺も何も喋らないまま乾いたシャッター音だけが響いた。

言葉足らずなのはお互い様だな。

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